このコラムは、筆者の2000年度における就職活動の実体験を元に、今後就職活動を迎える諸氏へ向けて少しでも参考になればと考え、自分なりに感じたこと等々を書き記すものである。はじめに断わっておくが、必ずしもあまねく全ての人にとって参考になるとは限らないので悪しからず。
そもそも就職活動はいつ始まるのか?これは考え方にもよるが、大学に入った時点ですでに始まっていると考えてもいい。特定の期間に特定の行動をすることによって就職先が決まる、という考え方は、あまりしない方がいいだろう。というのは、就職活動は入試みたいな側面があって、本番一発勝負もやろうと思えばできるし、コツコツと下準備をすることもできる。もちろん、一発勝負をする為には、自分に相当の自信があったり、それなりの基盤が既にあったりしなければならない辺りも入試と同じことである。ただ入試と異なる部分は、評価基準となるものが数値化されない、というコトだ。入試では勉強して来た結果としてどれだけテストができたか、という数値化された基準によって振り分けが為されるが、就職活動においては学生時代にどんな人格形成を行ったか、という極めて抽象的な部分が問われる。もちろん、採用過程で筆記試験も当然あるので、数値によって合否が決する部分もあるが、最終的にはやはり人間性が試される。つまり、学生時代を通して何をしてきたのか、が就職活動では大きな意味を持つので、直前になってあたふたしてもどうにもならない部分がある、というコトなのである。
とまあ、お題目を重ねるだけでは意味がないんで、実際はどうなんだよ、というのがここからのお話。
まず、3年の10月辺りからダイレクトメール(DM)がチラホラと届くようになる。始めの頃は、就職活動誌が宣伝を込めて「就職活動スタートブック」とか何とかいう名前の冊子を送りつけて来て、こんなのを見ると否が応にも就職活動が始まったのだな、と感じさせられるハズだ。しかし、それより先にやらなければいけないのは就職支援ウェブサイトへの登録である。この登録受付は10月か11月から開始するので、早い段階から登録を済ませておくのが重要だろう。
かつての就職活動は、何十、何百という枚数のハガキを企業に送って会社説明会や選考会の申し込み(エントリー)を行うスタイルを取っていたが、ここ数年はインターネットの普及に伴ってオンライン就職活動へと採用活動全体が移行している。これに呼応するように、インタ−ネット上には就職活動支援サイトが立ち上げられており、最近ではこれらのサイトを通さないとエントリーできない企業も少なくないようだ。この背景には、電算処理を行う上で採用窓口をウェブエントリーに一本化する方が効率的である企業側の事情もあるのだろう。もちろん旧来と同じく、ハガキによるエントリーも可能ではあるのだが、ウェブ抜きの就職活動はもはや考えにくい。
それというのは、ウェブを利用するメリットはエントリー場面での利便性に留まらないからだ。一つには、就職活動支援サイトと企業が上手い具合で繋がっているために、これらのサイトに登録をしておくとDMがバンバン届くようになる。ウェブ以外にも個人情報の入手ソースはあるので、登録をしていなくてもある程度のDMは届くハズだが、しておくのとしておかないのとではその量に歴然とした差が付くと予想される。また、サイトに登録する際は、志望業種や希望勤務地なども個人情報として登録しておく為、これにある程度沿った形でDMが届いてくる。就職活動支援サイトに登録する最大の理由は、ここにあると言っても過言ではあるまい。
しかし、ここで注意しなければならないことは、就職活動支援サイトには学校名なども登録することになる。企業によっては、学校を選んでDMを送ってくることがあり、私自身にも「早稲田大学の皆さん」と堂々と称するDMが何通か届いた。学歴をもはや問わない時代だ、とは言うものの、いまだにこういう風に学校を選んでくる企業が存在しているのが現実なのだ。そこで提案なんだが、就職活動支援サイトには自分の本データと偽データとで二重に登録してみてはどうだろうか。偽データで東大だの慶應だのと騙っておけば、送られてくるDMの数は増える、かも知れない。
何はともあれ、就職活動支援サイトがどんなものか、先に少し見ておくと雰囲気がつかめるだろう。
リクルートナビ、毎日就職ナビ、Jobweb
現在の就職活動では、情報源をDMとウェブの2つに大きく頼ることになるだが、そのうちの一つ、DMは実際どのように活用したら良いのか。
上にも書いた通り、就職活動支援サイトに登録を済ませた後は、12月あたりから腐るほどDMが送られてくることになる。とりあえず重要なのは、届いたDMはその日のうちに読むこと。忙しいから週末にまとめて読む、などと言っているといつの間にか膨大な量がたまって来て、一念発起してまとめ読みを始めたはいいがエントリ−期間を過ぎていた、なんて事が起こって来る(経験済み)。こうなってくると焦ってしまうばかりなので、とにかくすぐに読んで興味があるのかないのか判別していくことをお勧めする。また、ダンボールでゴッソリ冊子が送られてくる事があるが、この場合はとても一日で目を通しきれないので、記載されているエントリー期限が大体どれくらいまでなのかを先に確認しておくといいだろう。とにかく、膨大な量のDMを如何に整理するかで、精神的に随分と違ってくる思う。
で、メインはウェブによる情報収集、およびオンラインエントリーである。実際にどう進めていけばいいかと言うと、ウェブの利用の仕方には消極的な方法と積極的な方法がある。
まず消極的な方法。就職活動支援サイトに登録をしておくと、就職活動支援サイト内の自分のページに企業からメッセージが送られてくるので、これをシラミつぶしに読んでいけばいい。企業から来るメッセージには、大抵その会社が持っているウェブページのURLが書いてあるハズなので、できるだけ多く見て回るといいだろう。興味があれば説明会などの日程を確認してエントリーすればいいし、興味がなければ無視すればいい。11月や12月など、初期の段階では本エントリーはまだ行われていない事が多いが、プレエントリーを受け付けている会社があるので、これらにはエントリーして予行演習がてら情報収集をしておくといいだろう。
そして、積極的な方法。就職活動支援サイトは、本来は就職活動情報の検索サイトであるので、これを利用して希望業種の企業を検索していく。しかしこれは、目的意識が漠然としていたりすると、どんな企業を検索していいのかが分からないハズなので、DMやE-mail、就職活動支援サイトに送られてくるメッセージなどを読みながら自分の志向する業種や職種をきちんと把握していくことが前段階として必要だろう。また、冊子で送られて来た情報誌の中から気になる企業のウェブページURLを片っ端から書き出して、ひたすら見て回るのも序盤から有効な手段になる。
ここまでは自宅における就職活動の在り方の話だったが、ここから先はエントリーをした後で、会社説明会などに実際出かけて行った後のお話。大体、エントリーをした後はまず会社説明会に参加して、その後、適性検査、筆記試験、面接を数回受けて、最終的に内定、という段取りが一般的である。大きな企業では、適性検査や筆記試験の前に書類選考があり、エントリーシートと呼ばれるものを提出させることが多い。
で、まず会社説明会なのだが、これは読んで字のごとくである。大体はどんな事をやってる会社ですよ〜、というのを1時間とか2時間とか話するワケだ。この時は別段、質問をされたりするワケではないので気を張る事もないのだけれど、ある程度は前もって企業研究をしておいて、予備知識を持っていた方が説明の内容も理解できるだろう。どっちみち、面接の前には企業研究をしておかねばならなくなるのだから、会社説明会の前にもウェブページを一通り読み流すくらいの事はしておいた方がいい。
会社説明会の後、「この後、希望者には適性検査を行います」と言われるパターンがある。適性検査とはなんぞや、と思うだろうが、早い話が1次選考である。筆記試験とは違い、小学校の頃にやった知能検査みたいなモノをやらされたりするのだが、これでもバッチリ選考されているので気を抜けない。ただ、予備知識はほとんど必要なくて、適性検査の名の通り、できる人はできるしできない人はできない、という類いのモノなので、特に準備したり、という必要はないけれど、最初は戸惑うハズなので回数をこなしながら「適性検査はこんなモノか」と慣れていくといいだろう。とりあえず、適性検査がある事まで頭に入れて、会社説明会に参加する際は寝不足の状態で行ったりしないように。朝早かったお陰で適性検査で頭があまり回らず、バッチリ落とされた企業があった(笑)。
筆記試験は、一般常識を問う問題がほとんどだが、企業によって業種を反映した多少専門性を要求する出題が含まれている事が多い。例えば、メーカーであればグラフを読んで利潤の計算をさせる問題を出したり、ITであればエレクトリックコマースだとか、システムインテグレーションだとか、業界用語の説明をさせる問題を出したり、という具合である。一般常識問題としては、漢字の読み書き、和文・英文の読解、英作文、数学の文章題、など、大学入試をそれなりに経験して来ていればできて然るべきレベルのものがほとんどで、あとは時事問題が多少あるかどうか。一般常識対策の勉強を改めてしなければならないというのは、よっぽど問題だと思うのだがどうか。
それと、一つ重要なのは腕時計を持って行く事。当たり前のように思うだろうが、最近では携帯電話を時計代わりにしている人が多いと思う。携帯電話は試験中、机の上に置かないで下さいと指示されてしまうので、試験を受けに行く際は携帯電話と別にきちんと時計を持って言った方がいい。会場に時計がなかったりした上に、試験終了5分前まで合図がなかったりするともう泣くに泣けない(泣)。
ハッキリ言って、就職活動の最重要課題はこの面接である。面接で重要な事は、とにかく一つでも自分のアピールポイントを持っている事。そして、そのアピールポイントを活かして、面接官に自分のキャラクターを認めさせる事である。
私の場合はアピ−ルできる事と言うとゲームしかないので、とにかくゲ−ムの話で押し通した。幸いにも、保持スコアではないとは言え全一タイトルを2つばかり持っていたので、とにかく一つの物事に集中して粘り強く続ける事で全国一位を取る事さえできる、という方向に話を持って行ったのだ。粘り強さであるとか、集中力といったものをアピ−ルする上では大きな武器になったが、反面ではいわゆるオタクの非社交的なイメージを払拭しなければならなかった。この点に関しては、地方ゲ−センへの遠征などで多地域のゲーマーと交流があることや、ゲームショウで徹夜組の列整理をボランティアで行っていることなどで、ゲーム=インドアという既成概念を排し、ゲームを一つのコミュニケーションツールとして人間関係を構築する事の可能性を提示してみた。とかく、一つしか趣味がなくても、これだけ広がりを持たせる事ができていれば十分なアピ−ルポイントになり得る、というコトだ。
これは個人面接といって少人数で比較的自分が喋る為の持ち時間を多く持っている場合の話で、個人面接とは別に集団面接という形式を取る事がある。6人前後が一度に並び、端から質問を投げていくワケだが、人数が多い分、自分が話せるコトは少なくなる。集団面接では、とにかく他人に引きずられて同じような回答をしないこと。少々突飛でも、他人と差別化を図れるような発言をした方がいい。例えば「仲の悪い上司と仕事をしなければならなくなったらどうしますか」という質問に、前の人は「私は基本的に人が好きなので、人と仲が悪くなるようなことはありませんし、そうならないように周囲との関係の維持に努めます」と答えていたが、 私は「好き嫌いはハッキリしているので、仲が悪くなったらそれはそれで仕方がないでしょう。しかし、そのような私事が仕事の支障になってはならないので、仕事の運営を第一に考えて行動するし、そうして仕事を重ねていく中で関係の修繕ももしかしたら図れるかも知れません」と答えた。あまり良い子ぶるのは得策ではないので、多少強気な物言いができると良いのだろう。
面接の結果などは、電話やメールで連絡されるのが大半なのだが、中には自宅電話ではなく携帯電話/PHSに直接掛けてくる企業もある。かつては家で電話を受ける為にじっと自宅待機している、なんて場面が往々にしてあったらしいけれど、時代は変わったものだ。ところで、面接の合否がなかなか知らされずにやきもきさせられるのも困りモノなのだが、面接に行ってから家に帰ってメールを見たらもう落選の通知が来てた、なんていう異常なスピード決着を見た事があった。慎重な審議を重ねました結果、ってどこが慎重なんだろうか(苦笑)。
大企業などでは、グループワークやケーススタディという形で、実際の会議場面などを想定した討論を行わせる事がある。例えば、人事に関する議題が設定され、数枚の資料が配られた上でその資料を元に3人の候補者から1人を選定する作業をグループで行わせ、その討議過程を面接官が見る、といった感じだ。こういう場面では、おそらく積極的に先頭を切って発言をしていった方が得策なのだろう。少し引っ込み思案になると、後になって発言する人はどうしても誰かの意見に賛同する形になりがちなので損になる。思考力だけでなく、即決する決断力や、発言の説得力なども見られているハズなので、口達者でこういった場面にある程度慣れていないとなかなか大変かも知れない。私はグループワークで落とされて来た人間なので、ここでは敗者の弁しか語れないのだけれど。
数度の面接を通過してようやく内定へとたどりつくワケだが、その会社で本当に良いのか、というのは最後まで考えてしまう所である。そこでやりたい事ができるのか、自己実現が可能なのか、就職とその先の未来を見据えた上で、選択をしなければならない。私の場合は、3月上旬の時点で1社の内定が出ていたが、やはりどうしても大阪で就職したかったので、1ヶ月半迷った挙げ句にこの内定は辞退させてもらった。どこでも大体同じだとは思うが、内定は1週間〜1ヶ月程度の間に返答が求められるハズだ。この期間の間に並行して順調に進んでいる企業が何社かある時は良いが、なまじ早くに決まり過ぎると並行している企業もなく、そこで良いのか迷っていたりするとかえって精神的に大きな負担を抱える事になる。そうならない為には、予め何をしたいのか、勤務地はどこまで許容するのか、など、一定の判断基準を自分の中に作り上げておく事が必要だ。内定をもらっても行く気がない企業なら、最初から内定を取っても蹴ると言うだけの心構えを、持っておかねばならない。私の時は、就職活動を始めて最初に行った企業で内定が出てしまったので、早くから自信を持つ事ができたのは幸いだったが、やはり蹴るかどうかには随分とためらいがあった。
とにもかくにも、自宅にネット環境を持つ事が現在の就職活動にはほとんど不可欠とさえ言って良いだろう。毎日メールが舞い込んで来るし、学校の端末のみで就職活動を行うのは、負担も大きいし、何より不便である。特に、学校が家から遠い場合などはなおさらだろうと思う。
また、就職活動の時期というのは非常に大きな精神的負担を背負う事になる。これを少しでも緩和する為に、就職活動が本格化する前に貯金を行うなどして金銭的な余裕を作ったり、4年目に多くの単位を残したりしないように3年目までにキッチリ単位を取得しておく、などの地道な努力も必要だろう。貯金はしっかり作っておいたお陰でそれなりに余裕があるとは言え、就職が決まりこれを書いている今でさえも、ちゃんと卒業できるのだろうかという不安を抱えているのは、就職活動中と変わらず大きな負担であるのだからね。
いずれにしても、就職活動の前に、就職に対する目的意識はしっかり持っておく事を強く説いておきたい。大企業に行きたいと考えるのもいいが、大企業には充実した福利厚生がある一方で転勤がどうしても付きまとうし、大きな組織の中に組み込まれてしまってやりたい事が本当にできるのかという危惧も起こるだろう。小さい企業ならば、就職難と言われる今でさえもそれなりに入れる所は少なくないハズだが、今の経済状況を考えれば小さい企業ほど生き残りの難しい世の中になっていくだろう。就職は安泰を得るものではなくリスクは少なからず存在する事を認識し、その上で合点の行く選択をできることを、後続の諸氏には祈りたい。